水島くん、好きな人はいますか。
◇
ガタッガタッ、と。ドアやその枠にぶつかりながら、朝のホームルームが始まる前のD組に入ってきたのは瞬だった。手には1枚のプリントを持っている。
わたしはみくるちゃんと水島くんとしゃべっていて、ふらふらと歩み寄ってくる瞬に自然と会話は中断された。
……すっごく眠そうだけど大丈夫かな、今日の授業。寝て終わりそう。
「あーマジ具合わりぃ……徹夜とかするもんじゃねえな」
「徹夜? 得意じゃろ」
ほとんど目を閉じた状態の瞬を、水島くんは訝しむ。
瞬はゲームをクリアするために徹夜することなんてざらじゃないから、無理もない。
「わかってねえな……楽しんで徹夜するのとはわけが違うんだよ」
ひらり。瞬は1枚のプリントをわたしたちの前に出した。
すでに連絡は受けていたけど、上級生の参加者に遠慮などしない瞬をさすがだと感心してしまった。
「……サマーグリーン、キャンプ?」
早くも目を通した水島くんが言い、隣にいたみくるちゃんも驚きの反応を見せる。
「7月の期末のあと、テスト休み始まってすぐだ。2泊3日。行くぞ」
「……」
「お前もだ、みくる」
「えっ!? あ、あたしも……?」
「当然だろ。博も誘うけど、面食いはどうなった」
「りっちゃんはやっぱり行かないって」
「あいつほんと揺るぎねえな」
焼き増しのお金だけは用意しとく、って言われたのは黙っておこう。