水島くん、好きな人はいますか。




2日目の朝は快晴から始まった。

午前中はリバートレッキング。小さいリュックを背負い、観光スポットをゴールに山麓の川沿いを歩く。


「往復で1時間くらいだって」


≪せせらぎの道≫と書かれた地図看板を眺めていたわたしたちの元へ、班長のハカセがやってくる。


「じゃあ出発しまーす! 前と後ろにひとりずつ先生がつくから、先に進んだり遅れたりしないようにーっ」


引率の先生の声で、40名あまりの生徒が緑しかない山麓をぞろぞろと歩き出す。
わたしたちは5人そろって、中間あたりを歩いた。


「山だねえ」

「木しかないねえ」


昨晩、寝る前に泣いて体力を奪われたわたしとみくるちゃんは疲れているのか、のほほんと会話を交わす。


「うおっ。クマ出没注意だと。やべえな、山」

「音立てれば大丈夫だけん。そう書いちょるじゃろ……って、そぎゃん看板撮ってどうするかやっ」

「めずらしいもんは撮っておくだろーが」


いや瞬、たぶん少しもめずらしくないと思うよ……。水島くんどころかみんなの顔がそう言ってるよ。


携帯を翳す瞬に周りが茶々を入れる中、わたしはそろりと先に進んだ。
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