水島くん、好きな人はいますか。


「水島くんは、自分と、綾ちゃん。ふたりの運命を変えるために、帰るんだね」


彼女を救うこと。そして、彼女と共に生きること。それが幼いころ描いた、水島くんの夢でしょう?


「――……なん、で……名前……」

「わたしの目と耳がすごいからです」


茶化しても、水島くんは笑ってくれない。


本当は綾ちゃんがどんな子か話してくれるときも、愛しそうに、懐かしそうに、笑って話してほしかったんだけど。わたしの想いに気付いていて、気遣ってくれていたのなら……ごめんね。


ありがとう。

でもわたしは告白をしたいんじゃなくて、これからを話したいから。


「もうこんな風に話せないってことは、引っ越したら、わたしたちとは連絡取らない覚悟で帰るんだよね」

「……っ、」

「こっちに転校してきたときと同じくらい本気で、一直線に綾ちゃんだけを想って、守りたいって。今度こそ誰よりそばにいて、救ってみせるって、決めたんだよね」


揺れる瞳が、ごめん、と訴えていた。これで本当にいいのかと、悩んでいるようにも見えた。


「……それでいいんだよ、水島くん」


見開かれた水島くんの瞳が下を向き、陰りを帯びる。


「俺……自分勝手じゃろ」

「そうだとしても。申し訳なさを感じてくれてるってことは、それだけわたしは水島くんの近くにいて、大切に思ってもらえてるってことでしょう?」


そんな自分になれていたことが嬉しいから、『いいんだよ』って背中を押して、勇気をあげたくなるの。


わたしは1歩うしろで、この人を見守る支えになりたい。
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