水島くん、好きな人はいますか。
かさかさと葉が擦れる音に交じって、瞬たちの話し声が届く。前方を確認すると、瞬たちが戻ってきていた。
わたしはゆっくり腰を上げ、水島くんに見向く。
「どうせなら、朝まで遊ぶってありだよね?」
ぱちぱちと目をしばたたく水島くんは、
「俺に意見求めたこと、後悔すんなや?」
と立ち上がり、いたずらっ子みたいに口の端を上げた。
「あの、でも、遊ぶと言っても体力温存の方向で――…、え!? わあっ!」
突然手を掴まれたと思ったら、水島くんは勢いよく走り出した。
「待って! わたし脚速くな……っこける! 転ぶ!」
「聞こえーん!」
ぐんぐん瞬たちのほうへ加速する水島くんとちがい、今にも脚がもつれそう。
「離して! 本当に転ぶから! 水島くんまで巻き添えになるよ!?」
「ははっ! 巻き添え上等ーっ!」
先を駆ける水島くんの明るい声が、夏の夜をうがつ。
ついていくので精いっぱいなのに、思わず水島くんの手を強く握ってしまった。
ぎゅっ、と。握り返してくれた水島くんのぬくもりは、涙を誘った。
今のわたしには、水島くんの言う“永遠”がなにを指すのかわからないけど、諦めずにいてほしい。
わたしも、綾ちゃんが信じてくれるそのときまで、水島くんが水島くんでいられますようにって、願うから。
そうしていつか夢が叶ったとき、続きを聞かせてほしい。
幸せそうに、嬉しそうに。
わたしまでつられてしまう、眩しいほどの笑顔で。
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