水島くん、好きな人はいますか。

「打たれ強くてめんどくさいの間違いだろ」


さっさと靴を履き換えた島崎くんはくすりと小馬鹿にしてから、わたしたちの横を通り過ぎる。


「あの人にだけはめんどくさいとか言われたくないよね」

「よっぽどマヨマヨの落ち込む姿が見たいんだね」

「鬼畜、萌え!」


わたしは疲れるけど、島崎くんへの対応はみんなもずいぶん慣れたものだ。


「最近さあ、急に寒くなってきたよねー」

「あ、それで思い出した。新しいカーデ買いに行こうと思ってたんだ」


他愛ない話を聞きながら、教室へ向かう。


窓から覗く空は秋晴れそのもので、あまりの青さに夏がまだ続いているような気になってしまう。


ふたりとも、元気かな。
同じように騒がしい朝を迎えているかな。


わたしなんて、新しい恋の話なんて言われちゃったけどさ。まだまだそんな気分じゃないんだ。


終わらないものがあるとしたら、それは忘れられないものかもしれない。だからこの恋はきっと一生、終わることはないんじゃないかなって思う。


もし水島くんへ募らせた想いがなくなってしまっても、瞬やみんなが覚えていてくれるなら、この恋は永遠で。


わたしがしたのは叶わない恋ではなく、忘れられない恋。


そう思うと、切なさの隣に小さな嬉しさが芽生えた。


育てていける。何度枯れてしまっても、未来を目指すなら。


水島くんとの思い出が、わたしの胸にはぎっしり詰まっている。それは息苦しくなるほど。ひとつも失うことがないよう。わたしの夢と一緒に、今も、これからも。



――どうか、15歳の彼だけに宿った永遠が、彼女へ届きますように。



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