水島くん、好きな人はいますか。
「なーんか万代ちゃんいつも以上に暗くなかった? 瞬ってばまたいじめたんでしょー。ピリピリしちゃってさぁ」
「お前ほんっと幼なじみがクラスに来るの嫌がるよなー。突き放したいのか世話焼きたいのか、どっちなんだよ」
「どっちでもねえよ。ほっとけ」
そんな会話を背に、早足に廊下を突っ切った。
……頭、痛い。なんか、気持ち悪い。
「ねえ。正直さあ、みくる的にどうなの?」
吐くほどでもなかった、と安心したのも束の間。
トイレの個室に入っていたわたしの耳に届いたのは、みくるちゃんと、その友達3人の会話だった。
「いくら家が隣で幼なじみだからって、毎日一緒に登校ってありえなくない? みくると登校しろって感じ」
「ええ? 瞬たちバス通で、あたし電車通だよ? 帰りに駅まで送ってくれるのに、朝までとか……ないでしょ」
「みくるって気にしないタイプだよねー」
「うちらが気になるよ! 瞬、マヨマヨうるさいし」
「だよね」と響き、今日はとことんついてないな、と思う。
自分のクラスから近いほうのトイレに行くんだった……。
「構い過ぎっていうか、瞬ってばみくるの存在忘れすぎ!って思うんだよねー」
「マヨネーズも少しは気を利かせろって」
「ちょっと……。万代のことそんな風に呼ぶのやめてよ」
「だって、さっきも教室でわざわざ『万代ちゃん』って入れて話したのに、見向きもしないってなんなの?」
「人見知りなんでしょ? みくるも言ってたじゃん。あたしから見ても気ぃ弱そうだし。だから瞬も放っておけないだけじゃないのー?」