水島くん、好きな人はいますか。
「京とはふつうにしゃべってたじゃん。なんなの、あれ」
「いくら瞬の幼なじみでもねぇ……目障りだったかも?」
他人同然のわたしより、仲のいいみくるちゃんの肩を持つほうが自然。モテる水島くんがわたしと話すのは不自然。
わかっているのに、次から次へと出てくる不満や嘲笑が、それなりに攻撃力を持って心の表面をえぐり取る。
「ぶっちゃけさ、みくるもむかつくって思うこと、あるでしょ?」
じわりとのどに痒みを覚え、急いで口を押さえる。
「まあ……ね」
「ほらあ! ちゃんと瞬に言ったほうがいい、ってやばいこれ本鈴!」
バタバタと走り去る複数の足音は、激しく咳き込む自分のそれでかき消された。
……やっぱり瞬が正しかった。
わたしはただ不快にさせないよう早く教室に戻ろうとしたけど、その消極さが悪い印象になると危惧したから、瞬は肩を押してきたんだ。
この前の勉強会だって、わたしは結局みくるちゃんとばかりしゃべって、誰かと連絡先を交換するわけでもなく、逃げるようにひとりで帰ってしまったから、瞬が怒るのは無理もないと思う。
水島くんやハカセのように打ち解けようとしてくれた人もいたけれど、わたしはそれを良しとしない人の視線ばかり気にしてしまった。
怖気づくなら最初から来るな。瞬の、言う通り。
こうなったのは自分で蒔いた種。その通り。
気にしない強さもない、仲良くする努力もできないわたしは邪魔なだけで、みくるちゃんさえも苛立たせていた。