水島くん、好きな人はいますか。




「瞬のやつ怒ってたよー」


またわたしのこと話して……。


昼休みにE組へやってきたみくるちゃんは苦笑している。


以前なら瞬がごめんなさいって思っていたのに、トイレでの会話を聞いてしまってからは自分が責められている気がする。

もっともそれは瞬のことを訊きに来られるたび、みくるちゃんの友達から感じていたのだけれど。


「えっと……わたしが瞬のメールを引用したまま送り返したこと?」

「そうそう。聞いたときは笑っちゃったんだけど、瞬は『反抗期ブームなんだよ』とか言ってさ。あたしも瞬にむかついたとき、万代の真似しようかな」


おかしそうに笑うみくるちゃんへ、目元で笑みを返す。


これは、引き続きその調子でよろしく、って言われてるのかな。


「ていうか万代、風邪引いたの? マスクなんかして」

「あ……わかんないんだけど、咳が出るから、一応」

「そっかー。じゃあ無理かな? 今週末さ、また勉強会あるから誘いに来たの」

「……、えっと……」

「ああごめん! まだわかんないよね。病院は? ひどくなる前に行ったほうがいいよっ」

「うん……今日か明日にでも行こうかなって」

「そっかそっか。じゃあまた改めて連絡したほうがいいね。ごめんね、急に」


左右に顔を振ると、みくるちゃんは「またね」と手を振って待っていた友達と立ち去っていく。
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