水島くん、好きな人はいますか。




「万代!」


瞬と登校しなくなって1週間目の昼休み。E組を訪れた瞬に、りっちゃんが顔を向けた。


「いないって言っ」

「隠れきれてねえんだよ! 頭見えてんだろうがっ!」

「……ごめんよー、万代。これは庇いきれないわ。絶賛ご立腹中の幼なじみくんは、誰にも止められません」


椅子に座るりっちゃんの足元にしゃがみこんでいたわたしは、渋々腰を上げる。


「ちょっと顔貸せ」


振り返るなり廊下を顎で差した瞬は、もしものときのために隠れていたわたしが驚くほど怒っている。


顔も合わせてなかったから、このまま放っておいてくれるかと思ってたのに……。


あ、マスク外したままだ。頭の隅で思いながら廊下に出ると、瞬は窓際で待ち構えていた。


「いつまでくだらねえこと続ける気だ」

「……反抗期ブームなんです」

「茶化してんじゃねえぞ。俺がそう言ってるあいだにお前はやめるべきだったんだよ」


知らぬ間に猶予期間を与えられていたらしい。そしてその期限は切れてしまった、と。


「それならこの状況はおかしいと思う」

「はあ? 俺はやめろって言ってんだよ。お前の行動全てが癪に障るからな」

「だから、それならどうして、瞬がここにいるの」


怒っているなら、癪に障るなら、どうして“関りたくない”って思えないの。


おかしいよ。わたしと関わるから苛立つのに、どうして瞬が会いに来なくちゃいけないの。


気付いてないなんて言わせない。わたしが瞬のことを避けてるってことも、今、視線が集まってるってことも。
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