水島くん、好きな人はいますか。
◇
「万代!」
瞬と登校しなくなって1週間目の昼休み。E組を訪れた瞬に、りっちゃんが顔を向けた。
「いないって言っ」
「隠れきれてねえんだよ! 頭見えてんだろうがっ!」
「……ごめんよー、万代。これは庇いきれないわ。絶賛ご立腹中の幼なじみくんは、誰にも止められません」
椅子に座るりっちゃんの足元にしゃがみこんでいたわたしは、渋々腰を上げる。
「ちょっと顔貸せ」
振り返るなり廊下を顎で差した瞬は、もしものときのために隠れていたわたしが驚くほど怒っている。
顔も合わせてなかったから、このまま放っておいてくれるかと思ってたのに……。
あ、マスク外したままだ。頭の隅で思いながら廊下に出ると、瞬は窓際で待ち構えていた。
「いつまでくだらねえこと続ける気だ」
「……反抗期ブームなんです」
「茶化してんじゃねえぞ。俺がそう言ってるあいだにお前はやめるべきだったんだよ」
知らぬ間に猶予期間を与えられていたらしい。そしてその期限は切れてしまった、と。
「それならこの状況はおかしいと思う」
「はあ? 俺はやめろって言ってんだよ。お前の行動全てが癪に障るからな」
「だから、それならどうして、瞬がここにいるの」
怒っているなら、癪に障るなら、どうして“関りたくない”って思えないの。
おかしいよ。わたしと関わるから苛立つのに、どうして瞬が会いに来なくちゃいけないの。
気付いてないなんて言わせない。わたしが瞬のことを避けてるってことも、今、視線が集まってるってことも。