水島くん、好きな人はいますか。
「瞬を避けてるの?」
驚きからハカセを見る。委員の仕事をしながら話を聞こうとしているらしかった。
「よほどのことがあったんだね。瞬を避けたらあんな風に追いかけられるって、わかりきってたでしょ」
「……そう見えますか」
「うん。主導権は明らかに瞬が握ってるけど、瞬の行動指針って、実は万代だよね」
よく見てるんだな。そんな風に、ひやかしも嫉妬も気遣いも憐憫の情もなく、わたしと瞬の関係を口にされたのは初めてかもしれない。
だからかな? ハカセは自分のことでも相手のことでも、話すときは声音も感情も一定で、話しやすい。
「……変ですよね。ただの幼なじみなのに。瞬にあそこまでさせるなにかを、わたしが持ってるはずないのに」
「万代がっていうより、瞬が持ってるんじゃない? 幼なじみだからこそ、万代にだけ過剰に反応する心とか」
「そうだとしても……ハカセの言う通り、過剰なんです……幼なじみの枠を超えてます」
「ごめん、言い方が悪かったね。でもふたりにとっては、ふつうのことでしょ? 万代が枠を超えてるって思うのは、お互いが理由で交際相手と別れたことがあるから?」
ぎくりとした。
……そっか。当時は恰好のネタにされていたっけ。
1年生のときから瞬と一緒にいるハカセが知らないほうがおかしいか。