水島くん、好きな人はいますか。
梅雨が明けた頃、瞬はみくるちゃんからの告白を受け、ふたりは恋人同士になった。
お似合いなふたり。ずっと仲良く付き合っていてほしい。
だけど、相手の意思を尊重してくれるみくるちゃんに対して、わたしと瞬の意見は全くかみ合わない。
「みくるはふたりの関係を悪く言う子じゃないよ?」
「わかってます。周りがそれでいいと思ってないことも」
それにわたしは、聞いてしまったから。あれが本音であろうとなかろうと、わたしはもう、決めたから。
今度こそちゃんと瞬から離れようって、決めたの。
「……やっぱり早退届あげる。その顔色でまた瞬に追いかけ回されるのは、さすがにね」
立ちあがったハカセが、棚を漁ったり机でなにか書き込んだりしながら言ってくる。
「……、顔色そんなに悪いですか」
「そうだね。病院を勧めたいくらいには。関節痛かったりする? 風邪かな」
持っていたマグカップを取られた代わりに、校医の判子が押された早退届が手渡される。すると「上向いて」と言われ、顔を上げるとマスクを装着された。驚きが続いたのは、そのままハカセの両手に頬を包まれたからだった。
身じろぎひとつできずにいると、ハカセの指が耳たぶのうしろあたりを触ってくる。
「ああほら、やっぱり。扁桃腺けっこう腫れてる」
ハカセの手が離れ、自分でも確認してみると、確かに少し腫れていた。