水島くん、好きな人はいますか。
「下がコンクリートじゃなかったら直に飛び降りたんじゃけど、さすがになあ」
じ、直にって……。屋上から地上まで何メートルあると思ってるんだろう。
体どころか度胸まで鋼らしい。
だからって、へえ、すごい!なんて感心できるはずもない。
「下がなんであろうと危ないからやめてください……」
「だけん、助かったって言うたが。万代がおってよかった」
その笑みに半日ギブアップしたのが今日でよかったと思ってしまう。
ついでと言ってはなんだけれど、水島くんに告白した十数人の子の気持ちもわかったような気がした。
「俺これから用事あるけん。万代は? 帰るとこかや」
「……これ取りに来ただけなので」
「でも塾には行かん、と」
「……」
「万代のサボり方ってほんと計画的なんじゃなー。ふつうにサボればよかに」
「だ、誰にでも言わないでください……っ」
顔面蒼白1歩手前のわたしに水島くんは目を丸くさせ、すぐに吹き出した。
「言わんけど、そんな怯えるほどのことでもないじゃろ」
くっくっと笑いを噛み殺しながら言う水島くんに、頬が青からピンクに変わっていく。
水島くんは、本当にわたしのことをよく知っているみたい。
ちっとも嬉しくない。恥ずかしさのほうが勝る。
他に、どんなことを知っているんだろう。