水島くん、好きな人はいますか。
「おじゃましまーっす」
なんって強引な……! 戸口と一緒に引っ張られたわたしの横を、するりと通り抜けた水島くんに振り返る。
「台所借りてもよか?」
「……だ、」
台所って。さすが瞬の友達。類は友を呼ぶって本当なんだな。でも大した食材もないし、瞬が好きなカップラーメンはあったような気がするけど……。お腹が空いていたのかと思うと脱力する。
「お好きに使ってください……」
「ん。万代は寝ちょれよー」
リビングへ向かう水島くんにため息を漏らしてから自室へ入り、ベッドに身を倒した。
体、あつい。このまま眠っちゃおうか……でも水島くんがいるから……。あの水島くんが、我が家に……。
ああ薬を飲まなきゃいけないんだった。その前にご飯を食べなくちゃ。それより水島くん、どうしよう。瞬で慣れてるからって……今からでも帰ってもらうべきだよね。
散らばる思考の収拾がつかなくなってきたころ、ドアがノックされた。
「万代ー。入ってよか?」
「……、いやです」
届くわけもない拒絶のあと、「どうぞ」と少しだけ大きな声で言い直す。
「うわ、ははっ。ちゃんと布団入れやー」
体を起こすと、水島くんが小さな土鍋とポカリを置いた角盆を持って部屋に入ってきた。驚くわたしをよそに、それがテーブルに置かれる。
土鍋の中身は、卵粥だった。