水島くん、好きな人はいますか。

「そんなもん、とっくの昔から知ってるわ。2年前も無駄だからやめとけって言ってんのに、俺が悪く言われんのは嫌だって聞かなくて、譲らなかったじゃねえか」


くっ、と笑った瞬のそれは、柔らかいものに感じた。


「変わんねえな。お前も」



……変わらなくちゃいけないって思った。わたしも、瞬も。


だけどこの、まっすぐで偽りないのない幼なじみに、わたしは今までどれだけ助けられてきただろう。


瞬は寂しさを感じるくらいなら離れない。罪悪感から目を逸らさない。巻き返す努力をする。いつだって自分が正しいと思うほうへ行く。


それがたとえ誰かの犠牲の上に成り立っていたとしても、貫き通す強さが、瞬にはあるね。


わたしだって瞬を失わずに済むなら、どんな視線や言葉にも耐えられるのに。そうやって今まで来たはずなのに。


瞬に罪悪感を抱かせたくない、これ以上傷付けたくないという気持ちにばかり向き合っていた。


他の気持ちをもっと、大事にしてあげればよかった。


一緒にいることで迷惑をかけても、離れたくないって。瞬の笑顔が見たいって。


その気持ちを一度でいいから口に出せばよかった。


「わたし、瞬と幼なじみでいてもいい……?」

「当然」


間髪を容れず答えた瞬はベッドに頬杖をつき、


「だってお前も、ずっと俺の味方だろ?」


と、顎を突き出し見下ろすような視線を向けてくる。
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