水島くん、好きな人はいますか。
あの瞬が紹介してきた子はみくるちゃんだけ。
いっつも『関わるな』と言っていた瞬がはじめて、『仲良くしとけ』って言ったのがみくるちゃんだった。
それだけで特別だったけど、改めて彼女を魅力的な子だと思った。
「邪魔じゃないって言ってくれて、嬉しかった」
驚いたように目を見張ったみくるちゃんの顔がだんだんと、陰りを帯びていく。
その理由が、女子トイレでの出来事のせいだと気付いた。
「……あの日のことは気にしてないの。本当だよ。あれは、わたしが悪くて」
「万代は悪くないじゃん! 止めるべきだったのに、あたしが卑怯だったから……っ」
「止めてくれたでしょ? みくるちゃんはあのとき、やめなよって言ってくれてた」
「でも、あたし結局……」
「卑怯なんかじゃないよ。黙ってればバレなかったのに……瞬に話すなんて、わたしだったら絶対できないもん」
卑怯だったのは、みくるちゃんじゃない。
「わたし、みくるちゃんたちが羨ましかったんだと思う」
ぽつりと零した言葉が、数秒遅れでわたしを苦笑させた。
「わたしは、不機嫌で、よく怒る瞬しか見られなかったから。瞬と楽しそうに笑い合える人たちが羨ましくて……その輪に混ざりたいって、どこかで思ってたんだ」
だから余計に瞬から離れられなかったのかもしれない。