君と僕のエスパシオ






φ




こんな日にヒールの高い靴を履いてくるんじゃなかった、と思っていた。

朝から寒かったが、まさか地面が凍っているとは思ってもいなかった。
さっき立ち寄ったカフェで見た新聞には、午後からは雪が降るだろうと予報されている。

腕にある金色の時計を見ると、時間は2時を廻っていた。
エミリアは鞄からメモを取りだし、道路の傍に立つ標識を見上げた。

―ホワイトローズ通り 1-38

お世辞にも綺麗とは言えない、走り書きされた文字と標識に表示されてある文字が一致することを確認した後、エミリアは通りを歩きだした。

しばらく行くと、赤茶色の煉瓦でできた建物が見えてくる。
玄関の隣にテラスがあり、白いテーブルと椅子が置いてあるところを見ると、なかなかお洒落な雰囲気が漂っていた。



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