不良のたまり場

野良猫。
例えるなら黒猫か。
つんとした顔で
人を警戒する。
人を受け入れたようで
実は分厚い壁を作っている。

そうやって一人で
この部屋に閉じこもっていた。

彼女を早く外の
空気に触れさせないと…。



「誰もいなくなるなよ」


彼女は下を向いて泣いていた。
ぼろぼろと流れ落ちる涙。

俺と杉は戸惑った。
こいつも泣くんだって。
人なんだから。

人…なんだから…。


俺と杉は部屋を出た。


「さくらを頼む」

俺がそう告げると
杉がニヤリと笑う。

「それは俺には
適任しないな」

そう言って目配せをする。

廊下側のドアを見ると
ほっそりとした男子が
慌てた素振りで立っていた。

「えっと…」

それは同じクラスの太田だ。

「太田、さくらを頼む」

「は…はい…」


頼りないがもうこいつしかない。
彼女が地上に立つ術は―。


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