ただ、飛べてしまっただけ。





俺は部屋から出て食堂に向かった。



そこには制服姿の律華と寝癖をつけた圭太が食事をしていた。



「あ、おあおう!うーぢゃん」


律華が俺に気づき
パンを頬張りながら言った。


圭太は一生懸命ワックスを使って寝癖と闘っていた。


「龍兄、起きんのおせえよ」


「二人がはえーだけだろ? それより、ワックスで寝癖隠したって先生に怒られんぞ!そんなことしてねーで、さっさと飯食えよ」





俺の言葉に圭太は髪をいじっていた手を止める。



「龍兄ってそんな真面目だっけ? ワックスなんて龍兄、いつもつけてんじゃんか」


そう言った圭太を馬鹿にしたような目で俺は言った。


「中2のハナタレが格好つけてワックスなんてつけたところで、ベトベトすぎてすぐ、先生に見つかるだろって言ってんだよ」



そう言うと圭太は
ふて腐れたような顔をして、




「いつまでもガキ扱いしてんじゃねーよ」



と、言ってワックスの蓋を閉める。



「二人とも、朝からもめないでよっ」



律華が呆れた顔をして俺たちの間に入った。





いつも通りの朝。
俺はまだ生きてるみたいだ。





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