【短編】恋は魔物!?
反射的に美桜の手首を掴み、
「今日、俺の事いいなって言う女の子が居たけど?」
気づけば言ってしまってた。
「あ、いや、居ただけで…」
――断ったから。
――彼女いるからって言ったし。
俺の言いたかった言葉は、美桜の一言で言う事は出来なかったんだ。
「じゃあ、その人と付き合えば?」
掴んだ手首を、もう片方の手で外し、そのまま教室を出て行く。
カッチーン。
さすがの俺もキレた。
はぁ、何それ?
何で『その人と付き合えば?』とか言えるわけ?
立ち上がった拍子に、ガタンッと音を立てて倒れた椅子も気にせず、教室を出た美桜の後を追う。
「美桜っ!」
呼び止めても、止まろうとはしない。
少し開いた距離を走って埋め、肩を掴んで振り返させた。
振り返った美桜は、見た事もない冷たい顔で
『痛いから離してや』
とだけ言って、俺から目を逸らした。
「美桜はいいわけ? 俺が、その人と付き合っても?」
別に付き合おう、とか思ってない。
ただ。
ただ、美桜の態度にムカツイて言っただけなのに。
「哲がそうしたいんなら、すればいいやん? 私には関係ないし」