【短編】恋は魔物!?
もう一度、腕を引き抱きしめた。
勿論、美桜はもがいてたけどギュッって力を込めると大人しくなった。
「で、どうしたわけ?」
そのまま、落ち着いた美桜に聞いてみる。
だらーんとした手をあげ、指差す方向はマンション。
首だけ振り返ると、そこには美桜の鞄と紙袋が見えた。
「はっ? あれ忘れたから泣いてたとか!?」
「アホ!」
くくく。
久しぶりに聞いた、美桜の『阿呆』だ。
思わず笑ってしまった。
「何笑ってん?」
俺の胸元に耳をつけたまま喋る。
「え? いや、懐かしいなって思って。大阪弁が」
本当に、懐かしい。
美桜の声とか、顔とか、全部が。
たった1ヶ月なのに、今まで触れた事だってなかったのに。
何でこんなに懐かしいんだろうー……。
「ゲーム……返しに来た」
ゲーム!?
あぁ、あの紙袋か。
「って、えぇ? それだけ?」
「他に何があるんよ?」
だよなぁ。
どうせ、そんなオチだよなぁ。
初めてこんなに触れて、ちょっとテンションの上がってた俺は一気に落ちる。
今まで美桜と一緒に居てサプライズなんてなかったけどさ。
あって欲しかったよ、サプライズ。