【短編】恋は魔物!?
部屋から出ると玄関で靴を履く美桜と、母親が何やら楽しそうに話してた。
「あ、哲。 ちゃんと送ってあげるのよ?」
小太りな母親が俺に向かって言う。
「わぁーってるよ」
「別にいいのに」
俺が答えたのと同じくらいに美桜が呟いた。
別にいいのにって。
そりゃねーだろ?
いつも送ってるんだから。
それにそれ、彼氏に言うセリフじゃねーから。
「いいのよ、美桜ちゃん。どうせ家に居たって邪魔なんだし」
ケラケラ笑う母親に、背中をおもいっきり叩かれた。
いってぇ~。
母親の言うセリフでもないと思うんだけど。
俺の周りは、どうしてこう強い女ばっかなのかな。
「じゃあ、お邪魔しました」
にっこり微笑んだ美桜に
『次の休みもいらっしゃいね』
なんて母親も笑顔。
俺が、美桜の笑ってる顔を見るのは“人に向けられた時だけ”だ。