いぢわる王子様
「碧?」


すぐるの声にパッと体を起こし、振り返る。


暗闇の中のすぐるが、花火の明かりによって赤や青に照らし出される。


「すぐるっ!」


想いが通じた!


そう思い、駆け寄ろうとして……足を、止めた。


すぐるの後方に、誠先輩がいる。


「誠先輩?」


律もそれに気づき、立ち上がった。


広がる、沈黙。


花火の音だけが、遠くに聞こえる。


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