いぢわる王子様
律のことだ。


きっと、私が素直に謝れば許してくれるだろう。


けど……。


私は、手を伸ばして携帯電話を取った。


昨日、律からメールがきていた。


《先輩とのデート、どうだったのか聞かせてね》


このメールには、返信していない。


たったこれだけの文章の中に、


『私のことは気にしなくていいからね。先輩との事も、隠さず話してね』


という、律の気持ちがギュッと込められていることが、わかったから。
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