君の声。
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『陸ちゃーん!』
まだ小学生だった私は陸ちゃんと仲が良く、家が近くでもあったため、よく二人で遊んでいた。
その日も、私はただ大好きな陸ちゃんと遊びたいと、陸ちゃんの家を訪ねた。
『陸ちゃーん?
あれ、いないの??』
玄関は開いていて、私は何も思わず家に上がった。
いつも陸ちゃんがいるリビングの扉を開けると、
そこには陸ちゃんのお父さんがいた。
『おじさん!』
『…やぁ、雪ちゃんか‥。』
声を掛ければ、振り返ったおじさんは微笑んでくれた。
『おじさん、陸ちゃんは?今日陸ちゃんいないの??』
おじさんの方に近付いて、聞いてみた。
テーブルの上には何本かお酒の空き缶があった。
『…陸はね、母さん達と買い物に行ったよ。』
おじさんの口からはお酒の匂いがして、
まだ子供だった私に、お酒の匂いは苦手なものだった。
『…おじさん、お酒臭いよぉ‥』
そう言った途端、優しそうに微笑んでいたおじさんの顔がみるみると険しい表情に変わった。