君の声。
近付くおじさん。
動けないままでいる私は、怖くて、怖くて、
ただ怖いという感情だけが、頭を支配していた。
おじさんがテーブルにぶつかって、揺れたお酒の缶が床に落ちて音を立てる。
『‥ひっ……!』
ただ音を立てただけの缶に、私に恐怖を煽った。
目尻に浮かぶ涙が、映す光景を滲ませる。
『ゃ、やっだ‥やだ、やだやだやだよぉっ!!』
頭を抱え込んで身体を縮ませる。
ドッ、、、
身体を蹴られ、壁にぶつかる。
痛い、そう思うより先に、身体に次の衝撃が走った。
『ぃ、たぁっ、いたぃ……ヒッ……』
髪の毛を引っ張られ、また頬を殴られる。
『いたぃよぉっ‥たすけ、陸ちゃ、、ん‥助けて……』
殴られながら、ただ漠然と、助けてほしいと願った。
『陸ちゃん……!!』
『雪っ!!』
身体に受けていた衝撃が止んだ。
助けてほしいと、願った相手の声が、
あなたが、
『雪っ!』
『陸ちゃ……』
あなたの姿を見て、
そのまま私は意識が途絶えた。