君の声。





†side:陸†




「…雪、」




不意に、出た名前




止まった、差し出された父親の手




目の前の少女の、あの時の彼女の前へと歩を進めた。




「………雪、?」




彼女の前で、目を合わせてしゃがむ。




彼女の目は、悲しそうに自分を見ていた。




小さな口元が開いて




「…“雪”を、おいていくの?」




そう言った。




「…“君”の為だよ。」


「…“私”の……?」




そう言われて言葉が出なかった。




自分の為ではないと言えない。




俺はー‥




「逃げるの……?」











< 129 / 157 >

この作品をシェア

pagetop