君の声。
†side:陸†
「…雪、」
不意に、出た名前
止まった、差し出された父親の手
目の前の少女の、あの時の彼女の前へと歩を進めた。
「………雪、?」
彼女の前で、目を合わせてしゃがむ。
彼女の目は、悲しそうに自分を見ていた。
小さな口元が開いて
「…“雪”を、おいていくの?」
そう言った。
「…“君”の為だよ。」
「…“私”の……?」
そう言われて言葉が出なかった。
自分の為ではないと言えない。
俺はー‥
「逃げるの……?」