君の声。
†side:陸†
雪が隣にいる。
それだけで、帰ってこれたと実感できている自分がいた。
あの時、目を開けるより早く、手のひらにぬくもりを感じて
うっすらと目を開けた。
慣れない光が眩しくて、だけど、俺は見えたんだ。
『りくちゃっ……』
君の姿を
ぼろぼろと瞳から溢れる涙が、手のひらに落ちて、
泣いて、それでもしっかりと自分の手を握る雪がいて
それから、母さんや楢橋達が来て、
泣きながら抱き締められた。
それから、少し経って、俺は全てを話したんだ。
雪や母さん達に、ずっと声が聞こえてきたことー‥
母さんは泣いて、自分を責めてた。
ごめんね、って嗚咽に混じった震えた声で
姉貴は拳を握り締めて、小刻みに震えていた。
何も出来なかった自分と、気付いてあげられなかった事が悔しいって、
でも、違う。
誰かが悪い訳じゃない。
母さんは、親父を愛して結婚した。
結果がどうなったとしても、母さんは幸せになりたかっただけで
姉貴は、頑張ってた。
親父がいなくなって、母さんを支えて、小さかった俺の面倒も見てた。
精一杯姉貴は頑張ってた。
親父は、生きたかった。
自由になりたくて、生きたかったのに死で自由を得ようとした。
だから、生に執着した。