君の声。
けどそれだけで、
お互いが彼氏や彼女とかになったわけじゃなかった。
そのことに俺は何も言わなかったし、雪も何も言わなかった。
伝えられた事でよかったと思った。
何年も募ってきた想い
伝えられないまま終わらなかった事の安心感の方が強かったから、
それからの事を、お互いが考えていなかったのだ。
「これからの事だけどさ、」
黙ってしまった雪の代わりに俺から切り出す。
「…付き合う、とか」
言った途端ぎゅ、と俺の手を握る雪の手が強くなった。
「雪はそうしたい?」
「え、聞くの?」
「‥うーん、俺が決める権利とかは、ないし」
少しだけ苦笑して言った。
雪はああ言ったけど、俺の中では根強く残る記憶で
一歩を踏み出したいと思うと、どうしても踏みとどまってしまうのだ。