君の声。
藤堂 陸
トウドウ リク
17歳。
電車に乗れば頭一つ分出る身長と、漆黒の髪に切れ長の目。
世にうたわれるイケメンの部類に入るらしい俺。
でもそんな事はどうでもいい。
今は1月。
少し肌寒い季節。
階段を降り、リビングに出る。
「おはよう、陸。」
「おはよう」
俺の耳には現実の世界の音は入らない。入れない。
だから俺は人と話す時には唇を見る。
唇の動きを見て、何を話しているのかが理解できる。
俺がこんな世界をし始めて、何年たつだろう……
全てが始まったのも、あの時からだー‥
「陸!朝ご飯は?」
「いらない」
姉貴が話しかけてくる。
母親も姉貴も、俺のイヤホンを気にせず話す。
深くは追求しない。
事情を知っている訳じゃない。
けど、それでも追求しないのは、俺に何かあるとわかっているから…
だから俺も何も言わない。言えない。
こんな事を言ったら、きっと傷つくだろう。
そして、俺がこの現実の世界で、最も傷つけたくな奴のためにー‥