君の声。
「もう、ダメなんだよ…ダメだ!!雪とは、もう……」
「話せよ…親父さんの事も、“あの事件”の事も……!!」
「………!!」
“あの事件”……
「話せるか!雪はあの事件のことを忘れてんだぞ!あんな過去…雪にはない方が幸せなんだ…!」
「でも!!」
「話して…聞いた方の雪はどうなる!?…これ以上、雪にあんな顔させろってか!?また、また……」
「藤堂…」
「雪にあんな苦しい思いをさせろって言うのか…?」
強く噛みすぎた俺の唇は、
赤い血で滲んだ。
鉄臭い血の味が、
俺の口内に広がった。