君の声。
†side:雪†
ーガチャ
陸ちゃんと別れて、自分の家に入る。
「ただいまー‥」
「ん?あぁ、おかえり。」
リビングから玄関を覗いたのはお兄ちゃん
「‥なんだ?
楽しくなかったのか?デート」
「えっ、ううん!
そんな訳ないよ!!」
慌てて首を振って否定する。
本当にデートは楽しかったから。
陸ちゃんと笑い合って、すごく嬉しかったから
‥けどやっぱり、
陸ちゃんの瞳が曇っている気がして
最後に笑いかけてくれた微笑みも、どこか悲しかった。
「雪」
お兄ちゃんが階段を上る私に声を掛けた。
「なに?」
「お前は、陸が好きなんだろ?」
「えっ……」
戸惑ったけど、お兄ちゃんも真剣な顔をしてて、
もうわかってるんだって、素直に頷いた。
「陸は優しい奴だって、お前も知ってるだろ?」
頷く。
知ってるよ。そんなこと。
陸ちゃんが優しいなんて、ずっとー‥
「‥けどな、アイツは踏み出せないんだ。優しいからこそ、踏み出す勇気は持ってない。」
「‥?」
「だから雪、陸が踏み出せないなら、お前が踏み出すんだ。」
「私‥?」
できないよ。もし、私が伝えて、陸ちゃんを苦しんでしまったら?
首を振る。
「‥相手が、って言って、踏みとどまるのは恋とは違う。
本当に好きなら、伝えなきゃいけない。伝えなきゃ、後悔するだけじゃない。いつまでも振り切れなくなる。
‥いずれそれは、愛情じゃなくて執着に変わる事だってある。
そんな恋を、お前にしてほしいなんて、俺は思ってないよ。」