先生さまはキスで繋ぐ
「ん」


 カバンから生徒手帳を取り出して、先生につきつける。


「……了解」


 住所を頭にたたきこんだのか、先生は生徒手帳をすぐに返してくれた。


「そういえば、小遣い稼ぎって言ってたけど……金に困ってんの?」


「べつに? むしろ不自由はしてないよ。父親がいつもお金をおいて出て行ってくれるし。1週間それで暮らして、高い買い物しても余るくらい」


「……はあん、そういうこと」


 先生は頷いて、鼻をならした。


「あ、勘違いしないでよ。うち、別に離婚してないからね、両親」


「あ? そうなのか?」


「してないよ。副担任なら生徒の家庭事情くらい把握しといてよ」


「いや、あんまり積極的に把握しすぎて、ディープな話題にぶち当たっても困るし」


「うーわ、サイテー」


 私は笑った。


「離婚はしてないけど、別居中。近々離婚するんじゃない? 父親、彼女いるみたいだし。母親も若い男とよく歩いてるし」

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