先生さまはキスで繋ぐ
「うおー……ディープだな。どろっどろじゃん」


「娘を目の前にしてドロドロとか言わないでよね。いまどきこんな家庭珍しくないでしょ」


「まあなー、そうかもしんねーな」


 先生はウンウンと頷いてから、


「ってことは、お前は父親の家にいるってことか」


「出て行ったのは母親の方だから、今までと同じ家に住んでるだけだよ。父親はずっとホテルで寝泊まりしてるし、生活費置くために時々帰ってくるくらい」


「実質、独り暮らしじゃん、それ」


「……変なこと考えないでよね、いやらしい」


「なんでだよ!」


「冗談だよ。大きな声出さないでよね」


 私はすることもないので自分の爪を見つめる。


……のびてきてるな。切らなきゃ、おれてしまう。


「……お前はクールだなあ。いや、無関心って言った方が近いか」


 先生は苦笑をうかべているようだった。


「ほら、これ俺の携帯だから、メールアドレスでも携帯番号でもいいから登録しとけ。バイトしてもらいたいとき連絡するから」

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