先生さまはキスで繋ぐ
「三十路を言い訳にすんな」


「ごめんなさい」


 棒読みで謝って、先生は微笑んだ。


 車はスイスイと進み、私の家までスムーズに動いて、思ったよりも早くついた。


「じゃあ、またな」


「……送ってくれて、ありがとう」


「どういたしまして」


 フッと口元をゆるめて、先生は車を走らせた。


 それが視界から消えるまで……なんてことはせず、私はとっとと家の中に入る。


「……ただいま」


 誰もいないのに呟いて廊下を通り、自分の部屋に入って、深く深く、ため息をついた。








<ご主人さまに尽します・END>


(尽くしてなんてあげないけど)

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