先生さまはキスで繋ぐ
「おー、久しぶり、セイ!」
うちの学校の生徒がよく利用しているカラオケ店に着くと、入口の近くに携帯電話の画面を見つめている他校の男子生徒が立っていた。
白いシャツに、かっこいいデザインの校章がついた灰色のネクタイ、灰色のズボン。
たしか、偏差値が高いことで有名な男子校の制服だったと思う。
思う、というのは、その学校は隣の県にあるから。県は違えど、端っこ同士だからその学校に通う人も珍しくはないのだけれど。
石川は人懐っこい笑みをうかべて、その男子に近づく。
「ほんと久しぶり! 冬休み以来じゃねえ? 勉強で忙しいんだろ」
「いや、べつに」
ハイテンションの石川とは正反対に、彼は感情のこもらない声で言って、首を振った。
なるほど。確かに、かっこいい顔をしていると思う。アイドル風ではなく、クールな俳優にいそうな感じ。
黒髪と、切れ長の目と、長身。
なんだか近寄りがたいけれど、人目をひく容姿をしていると言えなくもない。
「あ、セイ。同じクラスの子たち。倉本と、藤堂」
石川はそう言って、私と円華を示した。
「ああ」