先生さまはキスで繋ぐ
 桂木くんは無言でうなずく。


「……円華のことを知ってるの?」


「違う。俺が知ってるのは、藤堂さんの方」


 ふるふるっと首を振り、桂木くんは私を見た。


「……私? どっかで会ったっけ?」


「会ったっていうか……俺、あそこの常連だったから」


「……え」


 私は青ざめ、


「トイレ行ってくる! みんなで先に歌ってて!」


桂木くんの横をすりぬけて、部屋を出た。バクンバクンと脈打つ心臓が、うるさい。


 なんで? どーしてよ。


 壁に寄りかかっていると、部屋のドアが開いて、桂木くんが出てきた。


「……」


 見上げると、彼は表情を変えることなく言う。


「あのメイド喫茶にいたのって、藤堂さんだったよな?」

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