先生さまはキスで繋ぐ
 たしかに、接客中のキャラは演技だった。


でも、笑顔は本気で頑張ってたんだよ。


何が分かるの。演技でも笑顔ができないから、私は頑張ってたんだ。


この無愛想な表情と態度のせいで、努力する前に誰も近づいてきてくれない。


それが何度か繰り返されてから、私は、努力することさえ諦めてしまったんだ。


「……そっか。そんなに、笑顔が下手だったかぁ……」


 私はわらった。


桂木くんが言うところの、下手な笑顔をうかべる。


「不愉快な思いさせたみたいでごめんね? でも大丈夫。私、あのバイトやめたから」


「……やめた?」


 桂木くんはゆっくりと目を瞬いた。


「そう、やめたの。新しいバイト見つけたから、やめたの」


「……ふうん。新しいバイト」


 表情を変えることなく、桂木くんは意味ありげに呟く。


「えっと……じゃあ、桂木くんは部屋に戻って? 私、トイレに行ってから戻るから」


 そう言って歩き出そうとすると、

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