先生さまはキスで繋ぐ
「待って」


一瞬ののち、手首を掴まれた。


「……なに?」


「俺が何のために藤堂さんと会わせてもらったのか、気にならないんだ」


 パチパチと目を瞬きながら、桂木くんは言う。


 冷たい表情なのに、その仕草はどこか可愛らしい。


「……私に、ケンカ売ってんの?」


 イラつきを隠さずに、目を細めて尋ねると、桂木くんはふるふると首を振った。


「じゃあ何」


「……友達になって」


「……」


 一瞬、何を言われたのか理解できずに、私はかたまった。


「……え?」


 ジッと見つめてくる桂木くんの視線にたえられず、訊き返す。


「ごめん、理解できなかった。何?」


「友達になって。俺と」

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