先生さまはキスで繋ぐ
「えー、だって。まあ、素を出すと何かしら面倒だから」


 先生はそう言って、自嘲気味に笑ってみせる。


「面倒だからって……モテすぎて困ると。モテすぎて女の子をあしらうのが面倒くさいと」


 自分でも自覚している冷たい声で言うと、先生がハハハと声をあげて笑った。


「悪い悪い。うん、でもまあごめん、それ事実だわー」


 そんな腹の立つことを口にする先生。


「……あーはいはい。モテる人はいいですねえ」


 まったくなんて教師だ、とため息をつくと、何を勘違いしたのか、先生は首をかたむけた。


「やきもちかー、ハルカー?」


「んなわけあるか!」


 運転している先生の脳天に軽くチョップをくらわすと、先生はうらめしそうに横目で私を見た。


「女の子が暴力は感心しなーい」


 口をとがらせて、教師のようなことを言う。


「あー、はいはい」


 なんとなく教師っぽいことを言われたことにムッとして、私は黙り込む。


そんな私を信号で停車するたびにチラリと見やって、けれど先生は何も言わずに自宅まで車を走らせた。







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