桜下心中
 数秒か、数分か。二人は動かないでいる。

 わたしは、溜息とも囁きともつかない言葉を出す。


「……このまま時間が止まってしまえばいいのに」

「きみのこと、この部屋に閉じこめておきたい」


 この想いが、気持ちが、愛するってことなんだろうか。


 それなら、二人はそれに食い尽くされるまで、このまま混ざり合うように抱き合っていたいと思う。



 いつの間にか、部屋は夜がゆっくり忍び込んでいた。



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