桜下心中
「前ね、このへんであいつ見かけてね、圭太ね、こんな汚い本屋に何の用かと思って見てたら、アンタが後から来たもんで、おおこりゃ、ここはあいつらの愛の巣かと思ってね」

 相変わらず、ブヨブヨ。

 そんなことどうでも良いから、早く帰ってくれないだろうか。

 圭太、早く来て。


「あんた、名前は?」

 声音が低くなり、糸田が言った。

「さえ、です」

「さえさんか。姉さん女房だね」

 なんで分かったんだか。圭太に聞いたのかもしれない。

「……ここで、ね。二人で」

 ニヤニヤと気持ちが悪い。




< 31 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop