桜下心中
「あの、もう、圭太さんが来るので」

「おや、帰れって? いいじゃないか、3人でお茶でも飲もう」

 圭太が来るまで居座る気らしい。

「いつも、二人で居るんだろう? ここで。いいじゃないか今日くらい」

「でも……」


「鍵かけてないアンタが悪いんだぜ」


 急に声が太くなり、わたしはビクっとした。


「これじゃあ、どうぞあがってくださいって言ってるようなもんだよ、ねえ」


 遠くで汽車の音がし、ああ、あれに圭太が乗ってますようにと願い、前に居るブヨブヨの目が怖くて見られないので、手の甲の毛深さを見ていた。


 怖い、早く圭太。帰ってきて。


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