桜下心中
「よう」

 不意に、テーブルに手をつきグイと顔を寄せてきた。

 圭太が使うペン立ての鉛筆やらハサミやらがガチャと音をたてる。

「アンタさ、もう圭太とは?」

「な、なに」

 もう片方の手が急に伸びてきて、帯に人差し指をグイとかけた。

「やめて」

「なにもしないよ」

 佐恵は、すっと立って横に逃れたが、たかが6畳の部屋、すぐに行く手は阻まれる。

「圭太は、優しいかい?」

 帯を今度はガッシリと掴まれ、引き寄せられる。



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