桜下心中
「僕にね、好きだと言ってきた、その妹。全く知らなかったんだけどね僕は……」

 あの糸田の妹。

「僕はお付き合いはできない、受験もあるしと断った。すると、首を吊ってね」

 失恋を苦に自殺、か。

「遺書があったらしくて、糸田が僕のところに来た。お前をずっと見張っててやるって言われたよ」

「圭太のせいかしら、妹さんのこと」

「どうかな」

 圭太は「どうでもいい」とつぶやき、「兄妹、僕が死なせたってことだな」と小さく言った。


 妹の自殺のことで、圭太にちょっかいを出して、それが原因で圭太に刺されて死んだ糸田。


 裸で立つ佐恵を見る糸田の歪んだ笑顔を思い出す。


 死んだのは可愛そうだが、深くそう思えない「恨み」に似た感情が心に染みてきていた。




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