桜下心中
 樹齢何年なんだろうか、二人が待ち合わせ場所にしている桜の木は、佐恵の家と圭太の家のだいたい中間地点。

 背の高い草が地面に生えていて、少し、下駄では歩きにくいのだけど。

「この桜の木みたいに、強く立っていられれば、圭太さんとずっと一緒なのに」

 言うと、圭太は眉間に皺を寄せる。

「またそんなことを」

「だって」

 白いシャツ、陽に焼けた顔はいかにも健康そうで、佐恵にはそれが羨ましくて、同時に愛おしい。

「僕らは一緒だ、ずっと」

 そんな風には、きっとならないことは、わたしは良く分かっている。

「佐恵ちゃんと、学校を出たら結婚するんだから」

< 6 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop