モテ男と勤勉オンナの【秘】ラブ・ゲーム
「は?」


「こうしてお茶の匂いを楽しんでいるとね。幸せなんだ。心がゆったりする。嫌なことを忘れられる」


ハルがぎこちなく口もとを緩めると、空っぽのカップを口につけて飲んだ振りをする


「入ってないじゃん」


「そうだね。全部、飲んでしまったから」


「嫌いな人間と飲んでても詰まらなくない?」


「『好きじゃない』とは言ったけど、『嫌い』とは言ってない。人間は少しの努力で変われる。桜も少しの変化でぐっと魅力的な女性に生まれ変われるはずだよ」


「なんで、私の名前を知ってるの?」


「携帯のストラップ」


あ…


ハルがポケットから出してくれた自分の携帯のストラップを眺めた


テーブルの上を滑るように動き、携帯が私の手元へと戻ってくる


全部、飲んだわけじゃないのに


ハルは私に携帯を返してくれた


「僕は人を好きになったりはしない。けど嫌いにもならない。葵が羨ましいよ」


ハルが席を立つと、伝票を持ってレジへと向かった


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