地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
「はい。携帯とバックね」
「ありがとう〜〜!」
持って来たモノを渡す。
よし。用事は済んだ。
帰ろう!
「じゃあね、柚莉」
そう告げて、スタジオの扉を閉めようとした瞬間。
「キャアアア〜〜」
「はっ!?」
──ガバッ!
一瞬、何が起きたのかまったくわからなかった。
けど、誰かに後ろから抱き着かれたことは、あたしの胸に回されてる腕が証明してる。
「やっぱカワイイ! ねぇ杏ちゃん、あんなバカ弟なんてやめて私と付き合わな〜い?」
「へっ?」
聞き覚えのある声に、パッと後ろを振り返った。
「んもぉ〜またキレイになっちゃって! あのバカをさらにメロメロにしちゃってるんでしょ?」
ニコニコと笑う顔は、あたしの大切な人によく似てる。
「咲さん!」
パアァァァとわかりやすいくらいに満面の笑顔を浮かべて、背の高い彼女に抱き着いた。