地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
咲さんにも会えたから、来てよかったかも?

だけど、そろそろ帰らなきゃ。

咲さんが、人気モデルで抱きしめられてるからかもしれないけど……ずっとスタッフさん達がこちらを見てる。


無関係の素人が、仕事の場にいるのはあまり良い気がしないかも。


「咲さん、あたし帰りますね?」


隣にいた繭ちゃんの手を引いて、離れようとした。

あ。繭ちゃんは、今日はただの人間にも見えるように術を施してある。

それに、咲さんも彼女の正体を知ってるんだ。


「ええ~~? 帰っちゃうの?」

「はい。用事も済みましたから」


ニコッと微笑む。


「なになに? 今からバカ弟とデート?」

「いえ……今日も仕事してますよ?」


アイツ、来週まで休みないって言ってたし。

お酒飲みに、キャバクラへ行く暇もないんじゃない?


今も忙しいんだろうなぁ~と悠長に考えていたら。


「はァ!? あんのっ……バカがっ!」

「「へ?」」


突然の咲さんからの暴言に、スタジオ内にいた人達すべてがあたし達を見た。

同時に、柚莉とふたりですっとんきょうな声を上げる。


「杏ちゃん? デートっていつからしてない?」

「えっ? そ、それは……いつだったかなぁ……」


チラリと、明後日の方を見た。

咲さんが、鬼の形相で怖い。

閻魔大王並だ。











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