地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
――陸Side――

キツイ。

体が言うことを効かない。

熱くて、目の前がぼやける。


講義なんて、まったく聞いてねーな。

ジイさんが何かしゃべってるって感じ。


90分の講義なのに、その数倍の長さを受けてるような気がした。



チャイムが鳴り、講義終了を知らせる。



やっと終わった。

次は会社だっけ?

書類整理と……企画書の確認。

あとは……何があったっけ?


ボーッとした中で、仕事のことを考えてたら……。



目の前に、サラサラストレートの黒髪が見えた。



「陸、帰るよ」


……杏?


ぼやけるシルエットから、自分の女であることはわかる。


「聞いてる?」

「あ……あぁ……」


白くて細い指が、俺の顔へと伸ばされ……近づいて来た彼女の表情が見えた。



……ヤベェ……マジでキレてる。
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