地味子の秘密 其の五 VS闇黒のストーカー
杏の手を引き、エスカレーターに乗って……上のフロアへ向かう。


「ねぇ……そんなに買ってもらって……よかったの?」

「あぁ。つーか、使ってくれねーと貯まり過ぎてヤバイんだよ」

「……はぃ!?」


心配そうに、俺の服を引っ張っていたが……コイツは、ワケがわからないという表情になった。


「一応、バイト代としてそれなりに給料もらってるんで。たまには使わないとな?」

「……」

杏は……相当驚いたのか、ポカンと口を開けて無言でいる。

「だから気にすんな」と言って、ポンポンと頭を撫でた。


「でもッ……」

パッと顔を上げて、何か言いたそう。

「まだ言うか?自分の女に、プレゼントしたって不思議じゃねーだろうが」

「……ッ」


エスカレーターが交差した瞬間、次の言葉を彼女から聞く前に、口を塞いだ。
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